『IKUE|幾重』が生まれた優しすぎる理由 【後編】

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前編の続きです。

シャンプー開発=スパイスカレー作り

一般的に、ヘアケア製品に低刺激性を追求すると、洗浄力が落ちてしまう傾向がある。シャンプーなのに汚れが落ちないのは致命的だ。だから、「優しいけれどしっかり洗える成分バランス」を突き詰めることにした。

これね、さらっと書いてますが、両立は正直めちゃくちゃ難しいんです。

個人的には、東大と京大どちらも現役一発合格するくらい難しいと思う。

そんなこんなでシャンプー開発の過程では、1,000回以上は成分の配合を試した。

研究室にこもり、来る日も来る日も考えるのはシャンプーのことばかり。

自分は一体何屋なんだろう・・・?というか、人間なのか?むしろシャンプーなのではないか?と、アイデンティティが崩壊しかけたこともあった。

しかし開発の過程では、実に多くの学びを得た。

一般的にプラスのイメージがある「天然」と名のつく成分でも、地肌への優しさの観点から見たらそうでもなかったり、

ネット上などでマイナス評価がされている一部の界面活性剤でも、絶妙なバランスで配合すれば、逆に泡切れが良くなり肌に残らなくて済むといったような。

さまざまな成分の特徴を踏まえながら配合を進めていくうちに、シャンプー開発は「スパイスカレー作り」と同じだと思うようになった。

スパイスカレーは、特定のスパイスだけたくさん入れても辛すぎたり不味かったりする。いくつものスパイスを「絶妙にブレンド」するからこそ美味しくなる。

私たちのヘアケア製品で実現したかったのは、この「絶妙なブレンド」だった。

「髪や地肌に優しくて、洗浄力もある成分バランス」これを見つけるまでに、随分と頭を悩ませた。次第に、寝ている間も夢の中でフラスコを振るようになっていた。

さて、この話をすると引かれてしまうかもしれませんが、髪や地肌への優しさを確かめるために私が何をしたのか明かします。

実は当時、生まれて数ヶ月の自分の子どもの頭をシャンプーの試作品で洗っていました。奥さんにも実験台になってもらいました。子どもと奥さんには、毎朝の地肌チェックと髪質チェックにも付き合ってもらいました。こんな父ですみません、そして、協力してくれてありがとう。

あなたたちのおかげで『IKUE|幾重』はあります。

そんな過程を経て、ようやく理想の配合にたどり着いた。1人で研究室で声にならない叫びを上げた。何を叫んだのかは全く覚えていない。ただ、全身の細胞が歓喜で震えた感覚は今でも覚えている。

優しさと幸せが『IKUE|幾重』にも

幾重 IKUE シャンプー

その後、トリートメントの開発も無事に終えることができた。販売用のボトルに充填されたシャンプーとトリートメントの姿を見たときは、まるでもう一人の子どもを授かったような感覚だった。

こうして生まれたヘアケアシリーズは『IKUE|幾重』と名付けた。

地肌にも、髪にも優しい。加えて生分解性が高いため地球にも優しい。

そんな優しさが使うたびに重なり、『IKUE|幾重』に関わるみんなの喜びにつながるように・・・。そんな思いを込めている。

さて、いよいよ販売を開始するタイミングになって、再び「売れるのか」という不安がやってきた。はっきり言ってヘアケア製品市場はレッドオーシャンだ。『IKUE|幾重』は市場に受け入れられるのだろうか、、、、

売り上げが芳しくなかった場合を思わず想像してしまった。社長の曇った顔や、同僚たちのがっかりした顔。みんな無言だが、明らかに「今まで何やってたん?」の表情だ。

あーーー怖い怖い、そんな未来だけは避けたい。どうか神様仏様・・・!

しかしその心配は杞憂だった。蓋を開けてみれば市場からの反応は良く、オンラインモールの販売は好調。一部のドラッグストアでも取り扱いが始まり、少しずつ『IKUE|幾重』ユーザーが増えてきた。2024年6月時点で累計5万人のお客様にIKUEを使っていただいている。あれほど伝わりにくいと思っていた『IKUE|幾重』の「優しさ」が伝わったのだ。素直に嬉しい・・・!

もちろん、自社ディアローグの美容室で使用するシャンプーとトリートメントは、全て『IKUE|幾重』シリーズに変えた。みんなお待たせ。やっとできたよ。これからは自分の手も労わりながら、お客様を美しくしていこう。

さて、『IKUE|幾重』は次のステージに進むための準備を始めている。髪質のお悩みにしっかり応えるプレミアムシリーズやヘアケアオイルの開発、従来の『IKUE|幾重』シリーズに新たな香りのラインナップを加えるなどだ。これからも仲間やお客様と二人三脚で、製品のバリエーションを増やしていく予定だ。みなさん楽しみにしていてくださいね!

幾重 木曽駒ファクトリー

最後に余談。『IKUE|幾重』は、長野県木曽駒にある自社工場にて生産している。これにも理由がある。木曽駒は当社の社長のふるさとであるが、人口減少や少子高齢化が進んでいる。地域活性化のためには、雇用の受け皿が必要だ。『IKUE|幾重』製造工場は、地元の人たちが生き生きと働ける環境を作るための役割も担っている。

手前味噌ですが、こんなふうにとにかく「優しさ」にこだわるのが当社ディアローグのスタンスです。これからも『IKUE|幾重』や、その他の活動を通じて、優しい社会になるように貢献していきたいと思います。

取り止めもない開発ストーリーを最後まで読んでいただきありがとうございました。

ディアーローグコスメティクス上席研究員 光田

光田 研究員

ディアーローグコスメティクス上席研究員
美容師歴14年

プロフィール

もともとの化学好き、探究心の高さから、美容師からヘアケアアイテム研究員へと転身。
述べ20,000人のお客様の髪の悩み、美容師の目線で解決するべく、日夜研究に没頭中。

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